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鈴 木ディレクターと会った件
今回お会いしたのは、モンスターハンターライズ:サンブレイクのディレクターを務めた鈴木佳剛氏。サンブレイク最後のイベントクエストの配信が終わった今、どんなことが聞けるのか…。
ゲームメディアサイトや、メディア雑誌の方が聞けない、訊いていないようなことをちょこちょこ聞いているので是非スミズミまで読んでもらえると嬉しいです。
今回、鈴木ディレクターに質問した内容は以下の通りです。
- 鈴木ディレクター個人の意見としては、シームレスエリアとオープンワールド、技術的な問題は置いておいてどちらがモンハンに合っていると思うか
- REエンジンはゲーム開発において開発チームが開発を行いやすくするためのツールという認識であっているのか?MTフレームワークよりグラフィックを高解像度にするだとか、PCと比べて性能の低いゲーム機で高解像度のゲームを快適に遊べるようにするためのツールだとかではない認識ですが…
- 鈴木Dは最新作のゼルダをプレイしたのか。
鈴木ディレクター個人の意見としては、シームレスエリアとオープンワールド、技術的な問題は置いておいてどちらがゲームとしてモンハンに合っていると思うか
■回答1
鈴木D「個人的に、モンハンに関しては『これが一番だ』というものは無いと思っています。
良くも悪くも『どちらもアリ』だという話になると思うんですけど、
モンスターハンターはシリーズ内でも作品ごとにコンセプトが違いますので、ユーザーさんにどのような体験を届けたいか、そしてその体験は技術的にクリアできるのかを判断して作られます。
そのためフィールドの形式においても、時代と共に常に変わっていくものだと考えています。
例えばライズ・サンブレイクでは、定められたフィールド内において、自由に移動してハンティングを行う形式で制作を行いました。
これはワールドやアイスボーンで構築されたレベルデザインと同系統のものです。
(私個人としては)この『シームレスエリア式のモンハン』というのは、モンスターハンターという作品における答えのひとつだと考えています。
これが『ストーリーズ』のようなRPGなどジャンルが違ったり、モンスターハンターをどういう形でどういった作品としてユーザーさんに届けたいかで、その都度また答えは変わっていくと思います」
管理人「今のシームレスエリア式はモンハンにおける完成形のひとつという認識ですかね?」
鈴木D「はい、(ライズ・サンブレイクにおいては)そうですね。私個人としては、オープンワールドのゲームも大好きですよ」
■質問2
REエンジンはゲーム開発において開発チームが開発を行いやすくするためのツールという認識であっているのか?
MTフレームワークよりグラフィックを高解像度にするだとか、PCと比べて性能の低いゲーム機で高解像度のゲームを快適に遊べるようにするためのツールだとかではない認識ですが…
■回答2
鈴木D「昨今のゲーム開発においては、大規模なリソースを取り扱う必要があります。
REエンジンは、色んなタイトル製作に応じてゲームのアセット(※1)データを会社内でサーバーを通じて共有・管理したり、タイトルごとに必要なアセットを取り出して使用したりすることで
開発速度の向上に繋がります」
管理人「私が以前CAPCOMさんが出している動画で見たのは、タイトル開発チームが『こういうものが欲しい』という要望を出して、エンジンのデータベース内に直接アセットを導入するREエンジン専門のチームも社内にあるとのことでした。
世間の声の1つに『REエンジンになったのだから、ゲームが高画質・高品質になっているだろう』というのが声があるんですが、私としては、あくまでREエンジンはカプコン社内でのゲーム開発を効率的にするもの、という認識なのでかなり世間との認識の解離があるように思います。
『REエンジンっていうのはそういうモノじゃないんだぞ』というのを広めて、ゲーマーの皆さんの認識を改められればな、と思って今回質問しました」
鈴木D「そうですね、決して高画質・高品質を求めるため "だけ" のものではありません。
先ほど仰られた通り、社内にはREエンジン専門の開発チームがいて、そこに『こういったツールがあったら便利だよね』と要望を出して、対応頂いたものを社内の他タイトル開発に役立てたりもしています。
既にサーバーにデータが上がっていて、ビジュアライズされているので、
良い意味での流用がされているんです。
勿論タイトルごとのオンリーワンで作っているモノもあるんですが、それでもやはりカプコンの大規模ゲーム開発においては、社内の他タイトルの資産・リソースを共通化して使っていくというのは大事なことかなと思っていますね」
※1:ゲームのアセット…箱や木などのオブジェクト、技のCGエフェクト、背景など様々なゲームの構成要素のこと
■質問3
鈴木Dは最新作のゼルダをプレイしました?
■回答3
鈴木D「はい、ティアーズ オブ ザ キングダムですね。」
管理人「あれってゲーム開発者の目から見て『こんなもの作ったらバグの発生やデバッグ処理、開発自体に絶対にめんどくさいことが起きる』的なことはやっぱり見つかるものですか?」
鈴木D「ひとつひとつの要素は勿論なんですけども、『ゼルダの伝説ブレス オブ ザ ワイルド』から続く部分ではあるんですが、一番の驚異は
『レベルデザイン』です。
決して一本道ではなく、そして寄り道をしても最終的にはキチンとメインストーリーの帰結に辿り付く。
ですので何でしょうね…フィールドにおけるレベルデザイン、次の目的の散らし方が、絶妙。
離れすぎず、近すぎず。主軸にも戻れるし、寄り道し続けることもできるし。本当に良い意味で時間泥棒ですね(笑)。
ゼルダはたくさんのアイデアが詰まっているんですけれども、その中でもやはりレベルデザインかなと」
管理人「ちなみにどれぐらいプレイされました?」
鈴木D「一応もうクリアはしているんですけど、僕の場合は寄り道をしまくるタイプなので…クリアまで時間が掛かりました(笑)。
メインストーリーも進めつつクラフト(ウルトラハンドやスクラビルド)も面白かったですし…。同業者としては羨ましくもあり、悔しくもあり。あのレベルのレベルデザインは、やらねばならんと思っていて。
称賛の気持ち半分、引き出しをもっと増やさなくちゃいけないなという勉強のところも半分ですかね」
管理人「勉強ということはやはり、仕事面のインプットもやりつつ…といった感じですかね?」
鈴木D「そうですね。ゼルダに限らず日ごろからインプットを行ってます。
私が担当したサンブレイクはライズという基盤がありましたので、良いところを増やして、より皆さんに新しい体験をどれだけしてもらえるかなと考えながら作れたところはありますね」
■質問4
(サンブレイクで)個人的には2種類の『疾替えの書』が革命的だと思っています
■回答4
鈴木D「そうですね。サンブレイクで入れ換え技を追加するのに、どうしても持てる技数に限りがあります。
かといって一武器種あたりの持ち運べる技の数が今までと同じで限りがあるとなると、遊びとしてはライズとあまり変わりません。
そこで『熟練の方が使えばより楽しめる』という形にして(疾替えと先駆けを追加)、初心者の方は元から使える3種類だけ使ってもらうでも良かったんです。
ただ、慣れてきたら『どこかのタイミングで切り替えてみてね』という思いで作りましたね」
管理人「いわば『熟練者救済』のようなところが…」
鈴木D「そうですね。より、ライズを深く楽しみたい方向けに作らせて頂きました。
モンスターのレベルデザインや難易度的に、疾替えを必要度としては含めていないんです。
なので、疾替え必須のレベルデザインには一切していなくて、今回は
『疾替えを強要するような作りにするのは絶対に避けよう』
という形で作りましたね。
そういった意味で言うなら『使いこなす方にはより深くなる』し、ただ一方で疾替えが使われずに存在自体に気付かないまま終わってしまっても『そこはいいよね』と」
管理人「ということは、朱の書と蒼の書を切り替えたら能力に変化があるというスキル(伏魔共鳴や狂化)を作ったのも、熟練者に『メリットがありますよ』と伝える意味合いもこめて?」
鈴木D「そうですね。メリットもそうなんですが、そういったスキルを盛り込むことで考える楽しみが湧くじゃないですか。
あの入れ換え技とこのスキルを組み合わせたら面白そうだ、という様なビルドの楽しみも増え、楽しんでもらえたらいいなという気持ちを込めて盛り込みました。
熟練者の方には疾替え(と先駆け)を、ライトユーザーの方に向けては『盟勇』を導入しました。
盟勇は、野良やマルチへの参加を行うのはハードルが高いなと感じるライトユーザーの皆さんに向けて、それを解決する形で導入しました。
機能的にはMHFの『ラスタ』等も参考にしています。
(ターゲット層が)一方向にだけならないよう、様々な人が楽しめるように方向性を変えたモノを盛り込んでいます」
雑 談でわかったこと
鈴木D「今、エグゾプライマルのステージにうちの一瀬が出てますけど、ただのエグゾプライマル大好きな人として出てますね」
管理人「え?大好き?」
鈴木D「エグゾプライマルに個人的に滅茶苦茶ハマったらしく、ランクでいうところの上位数%の世界ランカーなんだそうですよ」
管理人「マジですか(笑)」
その後、エグゾプライマルの平岡Dと久しぶりにお会いして聞いた話によると、夜にLINEで「世界○位取ったよ~」と画像が送られてくるそうな。